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ひ っ そ り と

【小説】擬態 第二回

 忘れるという行動についてぼんやりと考えてみる。
短期記憶の忘却とでも呼ぶのだろうか。
 



 何年も昔の事を忘れてしまうことは、これは仕様の無いものとして受け止める。
中学の頃に学んだ関係代名詞や、元素記号表などは、後に復習をしなければ、
おそらく5年後には忘れてしまう類の事柄であろう。

 ここで取り上げたいのはそれではなく、今日これから買い物する品物の一覧といった、
日常生活に直結する短期間の記憶についてとする。

 なぜ、10分前にしようと決めたことを、ひとは忘れてしまうのか。
ひとではだめなら、生物としようか。
 逆に考えようか。生物は、己の行動予定を忘れて、生きて行けるものなのか。
例えば今日の買い物は、どうしても必要であれば、メモを用意して出かけるだろう。
そういう風に、必要不可欠な行動に対しては、ひとは念入りに準備するものだ。

 では、今日の買い物は、不要な行動だったのか。そんなことはない。
今日の買い物とは、今日使うべき調味料や、トイレットペーパー等を補充するための、
日常生活で手元に置きたい品物を手に入れる算段である。
 
 生物が狩りを忘れることがないのは、狩りがその生物の生存に関わる重要な行動だからだ。
ひとが買い物リストを忘れてしまうのは、その買い物が今日明日の命には関係ないからなのか。
 そう考えると、買い物という行動は、生死に直結しない、お遊びとも呼べそうだ。
遊びであるならば、どうせならば、楽しく買い物を行いたいものだ。

 スーパーマーケットやショッピングモールが近年、巨大化しているのは、大店法のせいだけでなく、
買い物を娯楽に置き換えるための、業者による周到な策略ではないだろうか。
 購買意欲をそそるために、小売業者はさまざまな心理学の研究結果を応用してきた。
売り場構成、商品の配置具合、店内放送のタイミングと内容、包装(近年では有料化が主体である)、
そういった買わせるための実践に、人々はまんまと乗せられてきた。

 しかし、それは、短期記憶とは関係なかった。
財布を開いたとき、ひとは買うべきものの優先順位について考える。
それを考えなくても良い人は、リボルビング払いに慣れているか、資産家か、万引き常習者のどれかか。
月末払いクレジット引き落としは確かに便利な支払い方法であるが、つい遣いすぎてしまいがちだ。

 買い物前に予め購入予定品をリスト化しておくことで、無駄な買い物を減らすことはできる。
そうやって堅実に生きるひとであれば、メモを用意することは私が指摘するまでもなく当然の行動だ。
 いや、買い物はあくまでも例として挙げたまでだ。

 話を短期記憶に戻そう。
どうして5分前にしようと思った行動を、ひとは忘れてしまうのか。
それは私だけのミスなのだろうか?

 短期記憶の欠如について、まだまだ考慮すべき要素がありそうだと思いながら、今回は筆を置こう。
 
by derikayuki | 2011-08-14 18:53
閉じられた収納箱に喩えられる団塊の世代ジュニアが醸し出す日常と非日常を稀に公開して後悔して消すという実験?!

by 鞍馬天狗(旧名は消しました)