ひ っ そ り と

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じゃないと(Just Night It)

この夜も楽しかった。
今まで彼が過ごした数々の夜と比べて、今夜は格別とは呼べずとも、彼の内臓に染み渡るアルコールが純粋な生ビール(不純な偽物が貧者にはビールだというこの不景気!) が、彼の心地よさを半分保証していた。
朝よりも夜が幸せな訳。皺が目立たない。白髪や体のたるみや加齢からくる諸々が、大した事ではないと思わせてくれる。
夜は悪くない。
酒もまたそうだ。
正月とかクリスマスとか、独居男女には冬特有の孤独を味合わせる季節である。
人は一人では生きられないだろうとばかりに、ニュースは帰省客を報じるが、伴侶を亡くした人に失礼だと思わない傲慢さに気が付いて、テレビを持たない一人暮らしの者には、最早怖いものといえば、自分亡き後の資産の行方くらいか。
そのわずかばかりの貯蓄さえも奪おうと、日本政府は増税を唱えていた。
汽笛が鳴り響いた。
トンネルに入り、鈍行列車が速度を増した。
そこを抜けるとまだ闇だった。ようよう続く海岸線と、静かな住宅の点在するあいだを縫って、海水浴場の駅に着く。
雪は降らない。
明日が寒いと聞いて今宵の遠出を決めた男である。名前はまだ決まっていないから彼で通そう。
彼は今夜の幸福感についての評価を忘れ、明日の予定を立ててみる。
仕事はない。
遊ぶとして、今借りたテレビゲームをするべきか。それとも他の何かゲームか。麻雀は少し飽きた。年末に毎日インターネットで対局し、やり尽くした感じがある。
寝る事は好きだが、腰痛気味だ。
録画した番組を流しながら寝正月の真似事をしようか。
真似事といえば、物真似は高度な芸だと彼は思う。
真似る対象を把握し、記号化して演じる。それが本質を見抜く能力だろう。
ところで夜の電車内で音を出してテレビを見る事はマナー違反だろうか。という些細な疑問を提示して、このあやふやな主旨の作文を終える。
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by derikayuki | 2012-01-03 22:20